東京新聞 令和6年8月2日より転載
介護・シニア
障害者採用へ専用サイト
開設企業が増加 当事者意見を反映
【本文】
介護・シニア
障害者採用へ専用サイト
開設企業が増加 当事者意見を反映
障害者の採用について、専用サイトを設けて募集する企業が増え始めた。障害に対して会社がどんな配慮をしているのかといった情報を、動画なども交えて分かりやすく提供。当事者の意見をサイト制作に反映するのがポイントという。応募する障害者から「安心して働けると思える情報が多い」と評価する声が出ている。
(五十住和樹)
社内の配慮を紹介
大成建設(東京)は来春の新卒採用に向け、「障がい者採用サイト」をリニューアルした。障害のある社員の1日の働き方などさまざまな情報を盛り込んでいる。聴覚障害のある人には、話し言葉を字幕で表示するアプリを提供するなど、障害種別で会社が行っている配慮を明示。同社には昨年12月時点で障害のある社員が約160人いて、各社員の障害種別や担当業務などのデータも掲載している。
両下肢と左手に障害がある人事部の竹内夕貴さん(24)は面接を担当。「サイトを見て、自分と同じ障害のある人への会社の配慮が分かって応募した、という男子大学生がいた」と笑顔で話す。聴覚障害がある佐藤愛莉さん(27)は「知人や後輩から専用サイトがあることで応募しやすいと何度も聞いている」と効果を強調した。
同社サイトの制作を担当したのは、採用のコンサルタン卜をしている天職市場(東京)。障害者の立場を重視した採用サイトを希望する企業に提供している。
グループ企業が就労移行支援事業所を運営する綜合キャリアトラスト(同)は昨年、身体、知的、精神の障害者や支援員ら約100人に、知りたい情報や分かりやすい提供の仕方などを調査した。伊藤努代表取締役(41)によると、「自分と同じ障害の人がどう働いているか」「障害に対してどんな配慮があるか」「一般社員とのコミュニケーションの状況」を知りたいという要望が出た。
これらを基に、夫職市場は顧客に提供するコンテンツを検討。バリアフリーの社内を案内動画で見せる▽一日の仕事の流れを具体的に示す▽障害者の先輩社員インタビューやメッセージを収録-といった形でサイトを制作している。「長い動画を見るのは苦痛」という声もあり、コンパクトで分かりやすい構成にするよう工夫しているという。
また、「障害者社員が企業活動にどう関わっているか示すのも重要」という支援員の意見から、障害のある社員も含めた集合写真や地域活動の写真をサイトに掲載するなどしている。
現状では、障害者は契約社員としての採用が多いというが、正社員登用への道はあるのか、将来のキャリアプランをどう描くかといった情報も重要。顧客企業に応じて、これらのコンテンツを組み合わせてサイトを構築するという。
情報収集「多様に」
4月に改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者も合理的配慮が義務化された。具体的には、車いすの通行幅の確保や筆談の用意など、事業者と障害者が建設的な対話をして無理のない範囲で社会的な障壁を取り除く必要がある。大成建設で働く聴覚障害者の佐久間麻綺さん(24)は「義務化もあるが、専用サイトはいいものだから増えていると思う。どの企業も専用サイトがあるのが当たり前になってほしい」と話す。
障害者の職域開拓を30年以上続けている社会福祉法人プロップ・ステーションの竹中ナミ理事長(75)は「いろんな企業が積極的にチャレンジド(障害者)の雇用をバックアップすることで、世の中にいい影響が広がればいい。ただ、サイトだけでなく多様な情報源を参考にしてほしい」と話している。
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大成建設 障がい者専用サイト 当社では障がいがあっても少しでも働きやすいように様々な取り組みをしています
聴覚障がい
音声文字化ツールの法人契約等をはじめとした各種情報保障を行っています。
上下肢障がい、車いす利用者
就労中に車いすを使用するかどうかなど、しっかりお話をお聞きします。
精神・発達障がい
面接時に、得意なこと・苦手なことをお聞きしていきます。
㊤障害の種別ごとの配慮を説明する大成建設の「障がい者採用サイト」=同社ホームぺージから ㊦両足に補装具を着けた人事部の竹内夕貴さん=大成建設提供