2024年10月14日のクリップボード

神戸新聞 朝刊 令和6年10月14日より転載

正平調

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【本文】

正平調

高さ23センチ、重さ680グラム。上半身だけの白いロボットがテーブルごとに接客する。そんなカフェが今月初めまでの期間限定で、神戸・東遊園地で営業していた◆人工知能(AI)は搭載されていない。首や腕を遠隔操作して会話するのは、病気や介護などで外出が難しい人たちだ◆岡山県在住の干場文華(ほしばふみか)さん(22)は、筋力低下を引き起こす脊髄性筋萎縮症(SMA)のため一日をほぼベッドの上で過ごす。わずかに動く左手でパソコンを操る。3年前から東京・日本橋にある常設店を中心に週3回、接客してきた。「普段は人にしてもらうことが多くて、誰かに喜んでもらえるのがうれしい」◆飲み物や料理を運ぶのも遠隔操作の大型ロボット。他のカフェよりメニューの値段は少し高めだが、操作者との会話を楽しみに来店する客が相次ぎ、日本橋の常設店は黒字化を達成。アルバイト代で経済的自立につながった人もいる◆神戸の社会福祉法人理事長で、障害のある人が納税者になる社会を目指す竹中ナミさんは「神戸でも常設店ができ機運を盛り上げたい」と運営会社の応援に奔走する◆ロボットの愛称は「オリヒメ」。遠くにいる人と人がつながる七夕伝説になぞらえている。季節外れだが、こんな出会いなら毎日でもいい。

2024・10・14